屋久島には、九州最高峰・宮之浦岳が島の中央にそびえたちます。その高さ1936メートル。宮之浦岳の周りには、1800メートル台の山々が立ち並び、海に浮かぶその山々の風景から人は”洋上のアルプス”と呼んでいます。
宮之浦岳や縄文杉などハイカー憧れのトレッキングルートがあり、屋久杉や巨岩の風景に魅了される人も少なくありません。
屋久島の豊かな自然は、黒潮によってもたらされると言っても過言ではありません。黒潮の本流にのって多くの魚種が南方から運ばれてくるため、今ではサバ漁、トビウオ漁を中心に漁がおこなわれています。また、暖流である黒潮は、水蒸気となって屋久島の山肌を駆け上がり、雲になって雨を降らします。この雨が屋久島の植物にとって大きな恵みとなります。
屋久島の山岳部では、年間1万ミリの雨が降るとも言われます(里では年間雨量約4,000ミリ)。山で雨が降ると、沢を流れ、川を流れ、海へと流れ着きます。黒潮がもたらす多量の雨は、山から川を通して、水の循環をもたらしています。エメラルドグリーンの澄んだ川の風景は、私たちに心の潤いももたらしてくれます。
海岸から標高800メートル位まで急峻な山々が並びます。この里から見える山々を前岳と呼んでいます。屋久島の里では、海と山に挟まれて、里で田畑を耕しながら、時に海の幸、時に山の幸を求めて、自然とともに暮らしてきました。「海に10日、里に10日、山に10日」とは、まさにそういった生活スタイルを表現した屋久島ならではの言葉です。
ぽんかん、たんかんなどの柑橘系の蜜が終わりに近づくと、屋久島に春の大流蜜期が訪れます。1種類の花からの蜜でできた「単花蜜」から、様々な花たちの蜜が入り混じる「百花蜜」へと移っていきます。アカメガシワをはじめシャリンバイ、トベラ、ハゼ、スダジイさらにはアブラギリ、モチノキと蜜蜂たちは、蜜源を求めて飛び立ちます。春も終わりに近づくと、タラノメ、カラスサンショウなどが蜜源となり、大流蜜期を終えます。この流蜜期に重ならないように、自ら田畑を耕して、レンゲ、菜の花、ヒマワリを植えている。屋久島の多様な植物たちの恩恵を受けて、蜜蜂と人間の協働作業を経て、屋久島産「生はちみつ」は世に出ています。